研究論文の掲載 2021/10/21
本学博士後期課程に在籍している小関忠樹さんが筆頭著者の国際学術論文がBMC Neuroscience (IF : 2.811, 2020)に掲載されました。本論文は、順天堂大学 山口智史先任准教授(本学 客員准教授)研究室のメンバーで協力して実施した研究です。
末梢神経電気刺激は、中枢神経疾患後の運動機能や痙縮を改善することが知られています。しかしながら、効果的な刺激設定(特に刺激周波数)は十分に解明されていません。
今回、運動調節能力との関連が知られている一次運動野と脊髄前角細胞群の神経活動の同期性を評価できる脳波-筋電図コヒーレンス(CMC)の周波数活動に着目し、各個人が持つ生体信号に基づいた電気刺激治療を提案し、その効果を健常者で検証しました。
実験では、各個人のCMCの周波数を介入前に確認後、その周波数を末梢神経電気刺激の周波数設定に応用し、20分間の介入を実施しました。
その結果、各個人のCMCを刺激周波数に設定した末梢神経電気刺激の介入前後では、CMCや皮質脊髄路興奮性、運動調節能力は有意に変化しませんでした。しかし、刺激後のCMCの変化と皮質脊髄路興奮性の変化、CMCの変化と運動調節能力の変動との間に相関関係があることが明らかになりました。これは、刺激による神経活動の同期性の変化が運動調節能力の変化に影響することを意味しています。
本研究の結果は、末梢神経電気刺激の刺激パラメータを対象者個別に合わせることが、神経活動や運動制御を改善するために効果的であることを示唆する重要な基礎的知見です。
Tadaki Koseki, Daisuke Kudo, Natsuki Katagiri, Shigehiro Nanba, Mitsuhiro Nito, Shigeo Tanabe, Tomofumi Yamaguchi.
Electrical stimulation of the common peroneal nerve and its effects on the relationship between corticomuscular coherence and motor control in healthy adults. BMC Neurosci (2021).
https://doi.org/10.1186/s12868-021-00665-w